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KIOKU


KIOKU = プロローグ

 この場を借りて、全世界に発信する。
これから話すことは、決してSF小説や悦らごとではなく、真実である。
この記憶に、少しでも見覚えがある方は、ぜひ、連絡を取りたい。
いや、取らなければならない……。

 記憶…とは、今から2007年前のことになるのだが、
今の世界では2780年の未来の記憶でもある。
どこから話したら良いものか?
今の世界ができるとこまでは、とにかく話さなくてはならない。
それと、真の世界のことを……。

 今の世界と真の世界は非常に似ていて非常に異なるものである。
それは、今の世界が、真の世界の歴史を基に人類が創った、『記憶と疑似の世界』だからである。
人類は、高度の科学力であらゆる困難を克服して繁栄を築き上げていた。
そのころの人口は、月に15億人、地球に340億人にたっしていた。
日本はその中心であり、科学技術のみならず、文化・芸術・食・言葉までも世界中からあらゆるものが高く評価されていた。世界の標準語が日本語になっていたほど凄いものだった。

 問題は2780年から始まる。
2780年に2880年問題(彗星激突)プロジェクトが発足した。
このプロジェクトは、2880年7月オルトの海から飛来したと思われる、月の半分ほどの彗星が地球に激突するのを、防ぐためのものであった。
彗星を核ミサイルを使って軌道を変えることは容易かったが、くだけちった無数の隕石が地球に降り注ぐことが懸念されたため、核ミサイル製造は中止となった。
そこで、彗星に高出力のイオンエンジンを取り付けて、ほんの少し軌道をそらす、計画に変更した。
これは、簡単なことではなかった。
20年の歳月をかけて、1万個のイオンエンジンが完成。
彗星に取り付けるのに5年の歳月を費やした。
2805年4月軌道制御を開始!
だれもが、成功すると思っていた。悲劇の始まりである。
突然、制御不能!イオンエンジンの制御システムのみならず、太陽系全体がマヒ状態になった。
今でも原因は不明だが、太陽で起きた、たくさんの巨大フレアーからの強烈な電磁波が太陽系全対に広まったと推測された。
完全に制御不能となった、彗星は進路を地球に変えていた。
それは、地球まで1ヶ月の最短の進路となってしまった。
人類は最後の手段として、核ミサイルの使用を決断した。
彗星に向け数百の核が発射された。
見事に命中、その時彗星は大きく二つに破壊された。
その一つが、まだ、地球との衝突の軌道上にあった。
再び、数百の核が発射された。またも、見事に命中。
彗星は見事に粉砕された。
だが、無数の粉砕された彗星の破片が地球に降り注いだ。
砕け散った彗星の破片は数十万個におよんだ、中には直径が100kmに及ぶものまであった。
想像を遥かに超える衝撃は地球の大気を吹き飛ばし、地軸を傾け、極性反転までも引き起こしていた。
大地は煮えたぎる溶岩に覆い尽くされ、五つの大陸は一つの固まりになっていた。
それの大陸をパンゲアと名付けた。
地球では、この瞬間340億人が死んだ。
月も三分の二が壊滅、約14億人が死んだ。
残ったのは、月の裏側にあった、研究都市『月光』だけであった。
月の裏側にあったため、ほとんど、無傷の状態だった。
生存者は、約9000万人であった。
『月光』は人類の繁栄ために研究者が結集して造った研究都市である。
重要な研究施設は、6角形の建物が6ブロックで北にダウン、ストレンジ、ボトム、南にアップ、チャーム、トップが蜂の巣の用にドーナツ状に並んでいた。
かなり離れたところに、農業施設10ブロック、工業施設5ブロック、発電施設3ブロック、娯楽施設2ブロック、生活施設3ブロックと広大な研究都市となっていた。
『月光』は宇宙移民計画の一端を成していたため、完全独立循環環境都市として計画されたものであった。
そのため、食料・エネルギーなど、人類が生きていくために、必要なものはそろっていた。

大惨事から3年後の2808年に、地球テラホーミング計画が発足。
翌年、地球の完全な再生には、約10万年かかると判断された。
『月光』は、自給自足型都市であったが、10万年分のエネルギーを確保することはできるはずもなかった。
せいぜい、1500年が限度であったし、確保されても、これ以上の人口増加には耐えるスペースも、食料の確保もできなかった。
2810年人類は150年を費やした、10万年地球移住計画を3本柱で発足させた。
以下が3本柱である。
1.イズモ(量子コンピュータ)
2.アマテラス(9000万人分が収容でき、地球に人類を運ぶのも)
3.カンナ(アマテラスとイズモを制御するソフト)
この計画の発案者でもあり、『イズモ』の生みの親でもある、天才科学者コウ・ユリカは、量子を時間軸のドップラー効果を利用して、量子のテレポートを飛躍的の増大させることに成功し、これを量子コンピュータ『イズモ』に応用した。
『イズモ』は既に完成していたため、この計画用に改良を加えて2年で完成した。
『アマテラス』は約50年で完成にいたった。これも、基礎研究が完成していたからである。
問題は、『カンナ』の開発だった。
『カンナ』は常識はずれの性能の『イズモ』と『アマテラス』を制御し人類を快適に10万年保存することにあった。
肉体的保存は10万年でも耐えられるどころか、半永久的に保存可能な技術力を既に持っていた。
問題は、脳が耐えられないことにある。
長い期間、保存されると脳が狂うことがわかっていた。
そこで、『カンナ』が威力を発揮した。
現在の生活を脳に疑似体験させるのが『カンナ』の主な役割であった。
だが、上手くはいかなかった。
必ず60年前後に脳に異常を発生させる確率が非常に高かった。
そこで、1日に脳を休める時間を8時間あたえることにした。
これを、睡眠と読んだ。
それでも、110年に伸びただけだった。
長期には、とうてい、耐えられるはずもなかった。
研究は生きず待っていた。
ここまでに、すでに、80年の歳月が流れていた。

 『カンナ2』の開発
私はここから、携わった。
『カンナ2』はこれまでの『カンナ』を一からプログラムを書き直すことにした。
『カンナ』の問題点、特に脳異常の要因を取り除かねばならなかった。
『カンナ2』は、困難を極めたがついに完成した。
だが、人類とは別な生き方、習慣(リズム)を取らなくてはいけなかった。
真の世界との大きな違いは、寿命の概念を取り入れたことにある。
そもそも、人類にはいや、地球上の生物には寿命がなかった。
人類は二十歳前後の状態を保ったまま永遠に生きることができた。
それが当たり前であった。
寿命を取り入れたことにより性の概念が生まれた。
男・女、♂・♀のシステムは、画期的なものであった。
まず、寿命を80歳前後とし生きても108歳とした。
死んだ時点で脳をリセットして生きていたところまでの記憶を消去し、生がうまれた状態から記憶を1から再構築するようにした。
これの繰り返しを輪廻システムとよんだ。
安全策として『カンナ』で採用した睡眠も輪廻と融合させ、システムはより安定した。
これまで、無理と思われていた。110年問題もこれで解決した。
人類の本当の記憶は輪廻システムと矛盾するため、完全にブロックした。
人類がたどって来た記憶を新たな記憶として私たちに与えた。
2980年4月、約9000万人がアマテラスに乗員、10万年先の未来の地球に旅たった。

 あれから、2006年になる、人口も36億人になっている。
私も輪廻を繰り返しやっと、文明も栄え安定した時代を迎えるようになった。
だが、35億人は魂のないただのデータにすぎない輩がほとんど、本当の仲間は本の一部でしかない。
35億のどれが本物もかも見分けがつかない、あらためて『イズモ』の凄さを感じる。
私にだけ記憶があるのは、私はこのプロジェクトに携わって来たもの、そしてこれを見極めなければならない。
私と数人の同僚が本当の記憶をもったままこの新世界に入り込んでいるはずである。
『カンナ2』は100年ごとに、5名を目覚めさせ機械類のメンテナンスを行うシステムであった。
私もそのメンバーに選ばれていた。
私の場は、2000年に目覚めるはずであった。
だが、まだ目覚めない、6年たっても目覚めない。
もしかすると、『カンナ2』か『イズモ』に異常があったとしか、考えられない。
もし、10万年たっても、目覚めることができなかったら、人類は滅亡するしかない。
どんな、状態なのか早急に調べなくてはならない。

つづく

 

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